2010年9月19日上演(第12回公演)
チルチルとミチルが、幸福の青い鳥を探す旅に出かる童話「青い鳥」をモチーフにした,オムニバスミュージカル。
地位や力のあるものが偉いと言われる「権力の国」,みにくいあひるの子がいじめられている「外見の国」,わなにかかっているところを助けた鶴が、自分の身をけずって恩返しをする「欲望の国」。
訪れた国で散るチルトミチルは青い鳥を見つけることができるのか…?
真実の幸福とは何かを考えるミュージカル。
クリスマスイヴの夜、チルチルとミチルの兄妹は、きれいに飾り付けられ、ご馳走がテーブルを飾るパーティでにぎわうとなりの家をうやましそうに眺めている。
そんな二人の前に突然、魔法使いのベリリューヌがあらわれ、病気の娘のために『青い鳥』を探しに行って欲しいと頼む。
ベリリューヌは二人にダイヤモンドの付いた帽子を渡し、このダイヤモンドを回すと、不思議なことにこれまで見えなかった<物>の本当の姿がはっきり見えるようになると言う。
チルチルがダイヤモンドを回すと、部屋じゅう光に満ち、<時間><パン><火><犬><ねこ><水><ミルク><さとう>や<光>の精が次々と姿をあらわす。
そしてチルチルとミチルは彼らを供に『青い鳥』を探す旅へ出かける。
最初にたどり着いたのは「権力の国」。
きこりの兄弟の末っ子トンマは、ある日森に出かける。
力も弱く、頼りないトンマには、干からびたパンと水しか持たせてもらえないが、トンマは気にすることもなく森に出かけて行く。
トンマは森で出会った老人に、食べ物を分けて欲しいと頼まれ、気持ちよく干からびたパンを老人と一緒に食べる。
親切のお礼にと、老人からもらった金色に光るガチョウを大事に抱えて歩いていると、チルチルたちが通りかかり、ガチョウに触れ手が離れなくなってしまう。
次々にくっついてしまう精たち。
とんまを先頭にぞろぞろと奇妙な列が行進する。
お城には、生まれてから一度も笑ったことがないひめがいた。
そこに、トンマたちがぶつかったり引っ張られたりしながら、ヨタヨタ、ドタバタと行進をしながらやってきて、それをじっと見ていたひめが突然大きな声で笑い出す。
ご褒美としてトンマが願い出たのは、王としての地位や富ではなかった。
そしてチルチルたちは次の「外見の国」へ向った。
6羽の雛たちのなかで、一羽だけみにくく生まれたガースケ。
ほかの兄弟たちからいじめられ、母親からも追い出される。
沼や人間の家に行ったりしたが安らげる場所はなく、ひとりぼっちで心細くなり、なぜ自分だけみんなと違うのかと悲観する。
そんなガースケをチルチルたちは勇気付け、やがてガースケは大空を飛ぶことができる立派な白鳥に成長する。
ここにも青い鳥はいないとわかったチルチルたちが次に向かったのは「欲望の国」。
そこには雪の中でわなにかかっている一羽の鶴がいた。
それをみつけた与平が助けてやると、鶴は山の方に飛んでいく。
その夜、与平の家に美しい娘ゆきが訪ねて来て、その後立て続けにチルチルたちもやって来る。
ゆきはハタを織る間は決して部屋をのぞかないでくれと頼み、泊めてもらうお礼にと綺麗な布を織り始める。
織りあがった布は実に美しい今まで見たことのない織物だった。
ゆきはまたハタを織り始めるが、チルチルは「ほんのちょっとだけ」という精たちの誘惑に負け、とうとうのぞいてしまい驚く。
鶴の織物を売りに町へ出かけた与平は、大金で売れたと喜んで帰ってくる。
しかし、「自分はわなにかかっているところを助けられた鶴ですが、姿をみられたからにはもうここにはいられません」と、鶴の姿に戻ったゆきは、再び山の方に飛んで行ってしまう。
長い夜の明ける時が近づき旅も終わりとなる。
翌朝、ベッドで目覚めたチルチルとミチルには、長く空けていたはずの家が、まったく変わった様子はないのに、壁の周りの空気までもが驚くほど新鮮に、楽しげに、そして気持ち良く見える。
そして二人は、これまで家で飼っていた鳥が青さを増していることに気づく。
二人が探していた『青い鳥』は遠い国ではなく、ずっと近くにいたのだ。
そして一瞬の間に鳥は飛び去ってしまうのだった。